『人間の条件 そんなものない』
何が正しくて何が正しくないのかよくわからない。よくわからないままでは落ち着かないので何かしら標がほしい。だから「正義」とか「倫理」の話に注目が集まる。ただ、「○○主義」としてパッケージ化されたものを飲み込もうとしてもなかなかうまくいかない。もっとシンプルに、中学生でもわかる言葉で根っ子から考えてみることはできないか。この本は、そんなニーズにちょうどよく合致する一冊。自由・平等・生存といった根源的な問題を、現実的な社会制度と結びつけながら丁寧に考えてきた社会学者・立岩真也が、中学生以上の読者を想定する「よりみちパン!セ」シリーズのために、専門用語を排したやさしい言葉で書いた。といっても扱う問題がとても大きいので中学生にはおそらくちょっと難しく、むしろ大人の、専門家ではない一般読者に相応しい。
能力に応じた配分は正義か、といった問題設定から始まる。必要に応じた配分でもいいのではないか、という考え方が対置される。話が深まるにつれ「格差」「貧困」「平等」「自己決定」「生存権」「所得再配分」「ベーシックインカム」「ワークシェアリング」といった今日的なテーマに直結していく。根っ子から丁寧に積み上げられる思考は、世間でよく言われていることとは違った視界を開いていく。そこに希望がある。これが「知」の力であり、読書の醍醐味だと中学生以上の全ての読者に伝えたい。
(商品部 野上由人)









