『ザ・ロード』
理由が明らかにされていない災厄後の世界。灰色の厚い雲が空を蔽い尽くし、平均気温は下がり続け、わずかばかりの人間が生き残っているが、動植物は死滅しているので、狩猟や農耕を糧にすることはできず、世界はもはや再興の余地のないほどまでに荒廃している......その中を父と子が南に向かって旅をするというお話です。生き延びるためには、崩壊前の世界の遺物である缶詰などの保存食を探し廻るか、他の人間を捕らえて食べるしかありません。子である少年は、物心ついた時から今の世界しか知らず、父からは自分たちは善き者であり「火を運ぶ者」であると聞かされ、それを信じています。火を運ぶとは何か、その説明は記されていません。行く先々でつらく酷い出来事に遭遇しますが、少年の無垢は、世界の慄然とする光景と凄まじいコントラストを成し、目が眩むほどです。物語が進むにつれ、絶望は深まるばかりですが、その果てのほんの微かな希望の灯りに、読む者はほとんど茫然となるでしょう。
(リブロ東松山店 鈴木学)









